作品の技法について

展示作品は木工用ボンドと鉄粉をまぜたものを絵の具として、筆で紙に描いています。自分で思いついた技法なのでお手本はなく、実験・失敗・工夫を繰り返し、苦労の連続です。

鉄はもともとダークグレーなのですが、書いてまもなく錆びはじめ、数時間で茶色に変色します。濃度の違いなどちょっとしたことで色の変わり方も違うので、描いているうちは、想像しながらの作業でした。これまで数十点制作したうちの何点かは「なんでこんな色になったのだろう」と思います。

難しいのは、濃淡による表現です。薄い色をむらなく塗るのは特に難しいため、背景の面が広い部分は飲み残しのコーヒーを加えています。これは友人であるアーティスト「フジイフランソワ」が、画材に紅茶を使っていることがヒントになっています。また、焦げ茶色にしたい場合に、墨汁を混ぜたりもしています。

ボンドなんてどれも一緒かと思っていたら、メーカーによって書き具合や仕上がりの質感が微妙に違ったりします。鉄粉の定着剤としてだけでなく、書きあがった絵のコーティングにも使っています。鉄粉で書いただけのものは、一般的にいうまさに「茶色(アンバー)」なのですが、ボンドを重ね塗りすると、「こげ茶(バーントアンバー)」になり、絵が味わい深いものになります。

ボンドを使うと乾いた後で予想外の色になることも多くて楽しいのですが、乾燥が早いので筆がすぐにボロボロになるのが難点です。

「これ、なんていう技法なの?」と聞かれることも多いのですが、自分で思いついたもので、特に名前はありません。カテゴライズする必要もないし、別にどうでも良いのですが、強いていうなら「錆画」ということでしょうか。

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