クリエイティブって

「クリエイティブ」。直訳して「創造」というと大袈裟で違和感を覚えますが、ものづくりにおいては新しい表現方法であることや、新しい価値観が生み出されていること、それらが高品質であることだと僕は考えています。

広告、音楽、WEB、建築など、ものづくりに携わっているというだけで「クリエイター」を自称する人は多いけれど、本当にクリエイティブだといえる人はごくわずかです。みんなそんなこと深く考えていないのでしょうけれど、「クリエイティブ」という言葉は僕にとってとても重要なもので、「クリエイター」というのはおこがましいとさえ思います。「じゃあお前は何なの?」と問われたら、「ただのグラフィック・デザイナー。デザインの仕事をしているというだけ」ということに。気楽に考えれば良さそうなものですが、その考えはなぜか捨てられません。

30代半ばまで過ごしていた名古屋には「中部クリエイターズクラブ」という団体があり、定期的に自主企画のポスター展を開催するなどの活動をしています。向上心に溢れた人たちが精力的に活動していて、多くの若いグラフィック・デザイナーの憧れの的でもあり、僕もそのうちのひとりでした。しかし、経験を重ねるにつれ分かってきたのは、それらの作品はパクリだらけということでした。

デザインの専門学校生だった僕の卒業制作も実はパクリ作品で、「サイトウマコトさんみたいにしなさい」と担当先生に言われ、「人真似は嫌だなあ」と思いながら制作したのをよく覚えています。バブルの頃のアート志向のグラフィック・デザイナーは「引用」という言葉とともに、現代美術作品の真似ばかりしていた時代。その後、そういうデザイナーにはなりたくないともずっと思っていました。しかし、デザインの現場ではクライアントの要望があるなど様々な状況次第で、そうせざるを得ないことも少なくありません。

サイトウマコトさんのポスターはパクリと批判されることも多いけれど、そういう批判を吹き飛ばすだけの突き抜けたオリジナリティがあって大好きです。だからといってサイトウマコトさんを真似しようとは思いません。もちろん、なろうとしても絶対無理だし。なんて書いていますが普段のデザインの仕事でも誰かの作品を参考にしたり、影響を受けたりしながらやっているので、程度の違いがあるだけどパクリと一緒と言われたら、そうかもしれませんです。

僕の絵画作品はデザインの仕事を離れ、オリジナルの技法で、何の制約もなく作ったものです。「やっと、クリエイティブ」といいたいところですが、重要な「高品質であること」が達成できていません。高みを目指しているのだけれど、過渡期はまだまだ続きそうです。

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